という質問をしばしば見かけます。
インターネットでは会社に内緒で副業する方法が紹介されていますが…
「え?隠れて副業したからって、誰にも迷惑かけるわけじゃないじゃん!」
と思った方、間違いです!
本当は禁止されていたり、報告の義務があったりするのに隠れて副業している場合、会社に迷惑をかける恐れがあります!
私は企業で人事・労務を担当していた経験があり、その経験からお伝えしますね。
会社に内緒で副業した場合のリスク
2021年の調査によると、副業を認めている企業は【55%】。2018年の【51.2%】より上昇している傾向があります。
参考元:https://dime.jp/genre/1198635/
とはいえ、半分弱の企業は副業を禁止していたり、55%の企業のうち30%は条件付きで許可していたりと、対応は企業によってさまざま。
「報告もせずに自由に副業して良い」という企業で副業するのは全然問題ありません。
今回この記事で問題にしているのは、以下に該当する企業で、申告せず副業するケースです。
- 副業を禁止している企業
- 副業をするのはOKだが、報告が必要な企業
日本の法律では副業が禁止されているわけではないので、会社に内緒で副業したからといって、罰金を払わされたり、捕まったりすることはありません。
ただ、就業規則や契約書に副業に関するルールが定められているのにそれを守らなかった場合は、減給や解雇、契約解除などの処分に発展する恐れがあります。
副業が禁止されているのは、正社員・契約社員・派遣社員・アルバイト・パートなどの雇用契約者です。
雇用契約というのは、会社に従事されて仕事をする働き方。
会社が定めたルールを守り、労働力を提供する代わりに、給料や社会保障などが得られる働き方です。
つまり、会社のルールを守らないと、罰せられても文句は言えません。
…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「100%バレない」という保証はどこにもありません。
副業が会社にバレるわけ
住民税
会社員の方のほとんどは、住民税を毎月の給料から天引きして支払っていますよね。
これを「特別徴収」といいます。
給与明細を見ると「住民税」の項目があり、毎月がっぽり引かれているはずです。
住民税は、副業を含めた前年度の収入によって決まります。
前年度の収入が増えたら住民税の額も上がります。
つまり、住民税の額が不自然に増えていることで、「この人副業しているのかも?」とバレる恐れがあるんです。
もう少し詳しくお話すると…。
副業で得た収入は、毎月3月に確定申告をする必要があります。
確定申告をすると、その金額は税務署から各自治体に連携され、あなたの住民税が決定します。
そして、毎年5月ごろ、今度は各自治体から「住民税決定通知書」という書類が企業に送られます。
たとえば、杉並区に住んでいる従業員Aさんがいたら、杉並区から「Aさんの住民税はこれくらいですよ」というお知らせが会社に届きます。
(私が勤めていた会社は全国各地に従業員がちらばるリモートワーク企業だったので、色んな自治体から書類が届きました)
企業はこの通知書をもとに毎月の給与の住民税を計算するため、住民税が増えていると、「あれ?Aさんの金額、なんか増えてない?副業してるんじゃないの?」と気づくわけです。
一人ひとりの金額なんて確認しない会社も多いので、バレずに済むという意見も耳にしますが、担当者がマメだったり、何かの偶然で気づいたりすることもなきにしもあらずです。
(私がいた会社は中小のベンチャー企業だったので、通知書を見て一人ひとり住民税を手入力していました)
普通徴収に変更すれば問題ない!
こうした会社徴収(特別徴収)ではなく、自分で住民税を納付する(普通徴収)方法に変更すれば、会社に報告がいかないので、住民税の金額からはバレずに済みます。
インターネットでは、「普通徴収にすればバレない」と紹介しているサイトやYouTubeが多いです。
でも、自分で納付するのは面倒なので、住民税を給与天引き(特別徴収)にしている人は多いです。
そんな中普通徴収に切り替えている人がいたら、「副業でもするのかな」と感づく担当者もいるかもしれません。
その他、どこからバレるかわからない!
住民税以外にも発覚するケースはゼロではありません。
たとえば、同僚に「俺、先週から副業始めたんだよね~」とうっかり漏らしてしまったり。
SNSやブログで、副業に関する情報を載せたり。
本業の稼働時間が減ったり、本業の仕事でミスが増えたり、勤務態度で気づかれる可能性もあります。
正直なところ、副業を隠していても発覚する可能性は、高くはありません。
でも、ゼロではありませんし、何より会社に迷惑がかかります。
次の項目では、具体的にどのように会社に迷惑をかけるのか記載しました。
会社に隠れて副業するリスク
ここまでは、「副業が会社にバレる経路」についてお伝えしましたが、これからは「なぜ副業を隠すとダメなのか?」をお話します。
- 社会保険に関わるから
- 残業代(割増賃金)に関わるから
- 競業禁止に関わるから
1. 社会保険に関わるから
もし副業先もアルバイトやパートなどの雇用契約だったら、社会保険の加入についてトラブルに発展する可能性が出てきます。
(業務委託契約ではそもそも社会保険への加入がなく、残業代という考え方もないため、該当しません)
会社員が加入する社会保険は、【健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険】の5つ。
このうち、労災保険はパート・アルバイト問わずすべての従業員が加入する必要があります。
ただ、費用は事業主が100%負担するため、従業員は支払う必要も手続きをする必要もありません。
その他の保険の加入要件は以下の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 1年以上雇用が見込まれる → 2022年10月より2ヶ月に変更
- 月収が88,000円以上
- 学生でないこと
- 被保険者の総数が常時500人を超える事業所 → 2022年10月より常時100人に変更
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 継続して31日以上雇用される見込みがある
以上の加入要件を副業先でも満たしている場合、加入や手続きが必要になる場合があります。
- 健康保険:本業でも副業でも加入が必要。手続きが必要
- 厚生年金:本業でも副業でも加入が必要。手続きが必要
- 介護保険:40歳以上なら、本業でも副業でも加入が必要
- 雇用保険:本業と副業のうち、給与が多いほうで加入が必要
- 労災保険:本業でも副業でも加入が必要
健康保険・厚生年金については本業・副業双方で加入手続きが必要で、健康保険についてはメインの会社を自身で選択し、健康保険証を持つことになります。
すでに加入している保険の喪失届を出す必要があるかもしれないため、会社に相談しなければなりません。
また、例外や法改正もあるため、ご自分の会社で加入の必要があるのかは、人事部などに聞かなければわかりません。
本当は加入しなければならないのに加入していなかった場合、【会社に対して】罰金や罰則が設けられることがあります。
つまり、ひと言で言うなら「会社に多大な迷惑がかかる」ということなんです!
2. 残業代(割増賃金)が発生する可能性がある
こちらも副業先がアルバイトやパートなどの雇用契約だった場合です。
たとえば、本業で8時間、副業先で2時間働いたとします。
そうなると法定労働時間の8時間を超えるため、どちらかの企業が割増賃金を支払わなければなりません。
基本的には後から契約を結んだ会社に支払い義務がありますが、事情によっては双方に支払い義務が発生することもあります。
本来支払わなければならないのに残業代を支払っていなかった場合、これまた企業側に罰則が科せられます。
3. 業務委託契約でも安心できない!競業禁止に関わるから
ここまでご紹介したのがパートやアルバイトなどの雇用契約の話だったので、「クラウドソーシングとかの業務委託なら安心だな」と思っている方もいるかもしれません。
でも、一概に安心とは言い切れません!
会社によっては、就業規則や契約書で「競業禁止」を記載しているケースがあります。
技術喪失や情報漏えいのリスク等々で、「同業他社で仕事しないでね」ということです。
私が以前勤めていた会社も、上記の理由で、業務委託の副業であってもすべて申請してもらっていました。
(IT企業やメーカーなどは同様のケースも多いと思います)
副業先が業務委託であっても慢心せず、就業規則や契約書を確認してみてください。
もし、副業先でうっかり本業の技術や情報を漏洩させてしまったら……。
これまた本業先に迷惑がかかります。
コソコソ副業して満足できますか?
ここまで読んでみて、
「自分の副業先は業務委託だし、競業禁止もないから大丈夫そう。だから、申告しなくていいや」
「副業先も雇用契約だけど、働く時間は少ないから問題ない。だから、隠れてやっても大丈夫だ」
などなど、安堵した方もいらっしゃるかもしれません。
でも、本当は禁止されているのに副業していて、後ろめたさはありませんか…?
本当は報告しなきゃいけないのに、隠れて副業していて、満足ですか?
いつかバレるかもしれない、とビクビクしながら毎日を過ごして、のびのびと働けない。
それで良いんでしょうか。
私は、「こんな副業してるんだ!」って自信満々に言えるような環境が理想だと思っています。
あなたは、なぜ副業したいんでしょうか。
収入を増やしたいから?
スキルアップのため?
いずれにしても、将来の助けにしたいのであれば、やっぱり堂々と副業をアピールできる環境が良いのではないでしょうか。
同僚や上司に話すことで、将来のクライアントや仕事に繋がるかもしれません。
どうしても会社が許可してくれない、でも副業したい、というのであれば、上司に相談してみてはどうでしょうか。
上司が会社にかけあってくれて、副業を認められたというケースも耳にしたことがあります。
企業が副業を禁止するのは、情報漏えいのリスクや、本業に集中してほしいから、といった理由が多いです。
そうした点を気をつける旨をきちんと伝えて、交渉してみてはいかがでしょうか。
「本業以外に仕事を持つ」ということは、私はとても良いことだと考えています。
本業にもメリハリがついたり、かつて夢だったことを副業にしたり、いろいろな可能性があるからです。
会社に従事する働き方だけでなく、「いざとなったら個人で食べていける力」があると安心です。
そのためにも、会社員でありながら副業するのは良い道だと思います。
ただ、隠れて副業すれば会社に迷惑がかかったり、のびのび副業できなかったりと、デメリットも多いです。
ぜひ堂々と副業できる環境になるよう、努めてみてください!